バスケットボールで発生しやすい外傷や障害

バスケットボールで
発生しやすい外傷や障害

バスケットボールは、ダッシュ&ストップや急激な回旋動作、リバウンド時などのジャンプ着地時など足部に過度なストレスのかかるスポーツです。
足部の疾患は足関節靭帯損傷やアキレス腱炎、足底腱膜炎などさまざまですが、特に注目度の高い疾患については知っておきましょう。
足関節靭帯損傷は、捻挫など足首を捻った際に起こりやすい疾患です。
ジャンプの着地などで他のプレーヤーの足を踏んでしまうなど、足首の内返しによる外側側副靭帯損傷の発生が多いです。
受傷の仕方によっては、損傷場所や治療法が異なるケースもあります。

外側側副靭帯損傷

足関節外側にある靭帯(前距腓靭帯・踵腓靭帯・後距腓靭帯)の損傷が多く、足首を内側に捻ってしまうこと(内反捻挫)で生じます。まれに、靭帯損傷とともに骨折がみられるケースもあります。
ケガをした直後から痛みが強く、外くるぶし周囲に腫れがみられます。
損傷度が強いほど、歩行が困難なほどの痛み・腫れがみられ、放置しても完治しにくく、再発の危険も高まるため適切な処置が必要です。

ケガをしてしまった直後は、RICE(ライス)処置が有効です。

RICE処置

R:Rest(患部の安静)I:Icing(過度な内出血を抑え、熱を取る) 
C:Compression(患部を固定する) E:Elevation(患部を高くする)という処置です。

その後、医療機関を受診し、患部の状態確認を行うことで、スポーツ復帰までを明確にすることが可能です。
尚、RICE処置は他の部位をケガした際にも有効です。

当院での診察・処置

レントゲン撮影で骨折の有無を確認し、診察時に損傷度合いを確認します。
必要に応じて、テーピング固定なども行います。
患部の固定が十分にされていないと、運動時の痛みが残ったり、再発の危険度が上がるため、ケガをしたら出来るだけ早く医療機関を受診しましょう。
炎症が落ち着くと安静時の痛みが減り、テーピングやサポーターなどで固定されていると、日常生活での活動がしやすくなりますが、ここからが重要になります。

リハビリテーション

足首を動かす頻度が減るため、関節や筋肉・靭帯・脂肪体などの軟部組織は固くなり柔軟性を失います。このままスポーツ復帰をするとパフォーマンスの低下・再発の危険・損傷した部位をかばうことで、他の部位(アキレス腱・膝・腰などなど)のケガを引き起こしてしまいます。
当院では、急性期(けがをしてから2~3日間)の処置を行ったのち、スポーツ復帰までの期間、理学療法士・柔道整復師によるリハビリテーションにて、動きの悪くなった関節や筋肉・靭帯などの可動性や柔軟性を物理療法・運動療法で改善していきます。
個人に合わせた、ホームエクササイズやストレッチの指導なども行い、完治までをしっかりサポート致します。

リスフラン関節靭帯損傷

足の甲にあるリスフラン関節という関節に付着する靭帯の損傷で、捻挫などによる損傷が多いです。一般的な足関節捻挫(足関節捻挫参照)ではなく、つま先重心の時に過度な力が加わることで損傷しやすく、試合中に足を踏まれて転倒したなどの際にみられます。

リスフラン関節靭帯が損傷されると、荷重時に足底のアーチが低下するため歩行運動時の痛み。障害が起こります。

脛腓靭帯損傷

足関節捻挫で見逃されやすい靭帯損傷での1つで、下腿の骨(膝から下の2本の骨)にある前脛腓靭帯損傷です。

足関節捻挫で外側側副靭帯損傷に合併して損傷しているケースがあり、外側側副靭帯損傷のみの損傷と比べ、荷重時の痛みが特に強く、内くるぶし・外くるぶしを両側から圧迫すると痛みが増すのが特徴です。さらに、完治まで時間のかかることが多い損傷です。
時々、見逃されるケースがありますが、前脛腓靭帯損傷を軽くみてはいけません。
受傷直後は、RICE処置(足関節捻挫参照)が有効ですが、炎症期には、十分な固定を必要とするため、固定を外すタイミングや運動を開始できるタイミングを間違えると後遺症に発展しやすいので注意が必要です。

当院での診察・処置

足関節捻挫の損傷時のように、損傷状態を確認し、必要であれば、テーピング固定を行います。

固定除去後のリハビリテーション

足関節周囲の筋力低下や足底のアーチが低下するため足趾の踏ん張る力やダッシュ力が低下します。足趾・足関節の運動機能の回復・足底アーチの柔軟性を高め維持するためのリハビリテーションを行います。
足底のアーチが低下したままだったり、足部の関節に柔軟性が無い状態でスポーツ復帰をすると、足底腱膜炎やアキレス腱炎、膝痛や腰痛などを引き起こします。
ケガをしていなくても、足趾がうまく使えていなかったりすると偏平足や外反母趾などを引き起こし、他の部位への疾患を生む引き金になる可能性もあるため、治療期間を把握し、焦らず治療することが大切となります。

アキレス腱炎・周囲炎・滑液包炎

人体最大の腱と呼ばれるアキレス腱とその周囲の炎症です。
アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋・ヒラメ筋)が合流し、かかとの骨(踵骨後面)に付着します。踏ん張りやダッシュ時、ジャンプで体重を支える+瞬発力を出すためにとても大きな力を発揮します。
そのため、靭帯の周囲には摩擦を軽減したり、柔軟性を高めるための脂肪体や滑液包が存在します。
ジャンプ着地時など瞬発動作やダッシュ後の切り替え・急停止などで損傷するケースが多いです。

アキレス腱炎かアキレス腱周囲の炎症かで痛みの場所や損傷状態が異なるため、リハビリテーション内容や運動開始時期など担当の先生に治療時期や運動時期などをしっかり確認しましょう。

治療、リハビリテーション

アキレス腱炎の治療で重要となるのは、アキレス腱とふくらはぎ筋の柔軟性改善・維持・足部の可動性と柔軟性です。
炎症期を過ぎ、痛みが緩和するころに、すぐ急激な運動を開始してしまうとアキレス腱と周囲の脂肪体の柔軟性が無いため、高い確率で再発または、アキレス腱断裂・アキレス腱へ合流するふくらはぎの肉離れが起こります。
損傷度合いにより、完治までも時間のかかる疾患のため、痛みが取れた=完治ではないことを念頭に置いて、リハビリテーションを継続しましょう。

肉離れ

肉離れは、筋繊維の部分断裂のことです。筋肉が伸長されている状態から急激な収縮が働く際に筋肉の線維が引きちぎられることで生じます。
ダッシュ&ストップなどの瞬発的な負荷でよくみられます。普段使っていない筋肉を急に使ったり、筋疲労が抜けていなかったり、筋肉の柔軟性が低下している状態などで受傷することが多いです。

一般的に多いのは、
ふくらはぎの肉離れで腓腹筋の内側中央上部が損傷するケースが多く、かかとからの荷重がかかると痛みが強くでるため、つま先歩行で来院する方が多いです。
つま先になることで、ふくらはぎの筋肉が伸ばされないため、痛みがやや減少します。
ふくらはぎ以外にも、大腿四頭筋やハムストリングスなどの大腿の筋肉での肉離れも発生しやすいです。
損傷直後はRICE処置を施し、テーピングなどで固定またはサポートをして筋肉が伸ばされないようにすることが重要となります。断裂した筋繊維は瘢痕組織(傷の間で組織同士をくっつけるボンドのようなもの)と呼ばれる組織により自己修復を行いますが、損傷前と同じに戻るわけではありません。
筋繊維がきれいに戻るのではなく、損傷した筋繊維同士が硬く圧縮された状態で結合 するため、筋肉が本来もつ柔軟性はかなり低下します。

治療・リハビリテーション

炎症期は、安静が維持できるようにテーピングを行ったり、歩き方の指導などを行います。その後、硬く結合している筋繊維をできるだけ元の状態にもどすためのリハビリテーションが必要となります。損傷が重度な状態や、軽度でもリハビリテーションを怠ってしまうと、日常生活でのちょっとした動作でも肉離れを再発してしまうことがあるため、しっかり治療計画と期間を聞いておくことが重要となります。

膝関節

選手同士の接触が多いコンタクトスポーツに多く、自分の進みたい方向をディフェンスに止められ急停止したり、ボールの取り合いでぶつかり合うなどをすることで、膝への過度な抵抗運動が働き、損傷してしまうケースも多いです。
成長や・筋肉の柔軟性の低下により引き起こす、オスグッド病やジャンパー膝なども多い疾患ですが、膝を構成する4つの靭帯と2つの半月板の損傷も多く、重篤なものは手術の対象となり、選手復帰に長い期間を要する場合もあります。
膝を構成する4つの靭帯と2つの半月板は以下の通りです。

これらの靭帯や半月板は単発で損傷するケースもあれば、同時に複数の靭帯や半月板が損傷するケースもあり、損傷している部位が多いほど完治に時間がかかります。

半月板損傷

膝関節の大腿骨と脛骨の間にある繊維軟骨という軟骨です。内側と外側に存在し膝にかかる負担を分散したり、衝撃を吸収する働きがあります。
膝関節に荷重とねじれる動作が強く加わったり、急な衝撃や圧が加わることで、亀裂が生じたり・欠けたりすることで損傷します。
半月板の損傷部位や損傷の種類(下記図参照)によっては血流が乏しい部位も存在するため、血流が乏しい部位ほど、修復するための栄養がないことから、重症度が高く、完治しにくいと言われています。
内側半月板は、前十字靭帯と内側側副靭帯と結合している部分があるため、合併して損傷しているケースも多くみられます。

日本整形外科学会より引用

前十字靭帯損傷・後十字靭帯損傷

スポーツ外傷で頻度が高く、ジャンプの着地時や急な方向転換、急停止時に発生することが多い疾患です。
前十字靭帯は大腿骨と脛骨の間に付着する靭帯で、大腿骨に対して脛骨が前方へ滑ることや回旋する際に制限をかける靭帯です。
後十字靭帯も大腿骨と脛骨の間に付着する靭帯で、前十字靭帯とクロスするように走行し、大腿骨に対し脛骨が後方へ滑ることや回旋する際に制限をかける靭帯です。
ともに、膝関節の安定性を保っています。

受傷時には、
「ブツッ!」という断裂音を感じたり、膝が外れた感じとともに激しい痛みに襲われます。関節内で出血が発生し、腫れや膝の曲げ伸ばしに制限がかかります。

前十字・後十字靭帯損傷は、靭帯の部分断裂または完全断裂が生じています。
膝の動きに制限をかけ、安定性を保つ役割の靭帯が損傷すると、安定性が失われ、運動時に膝が急に「ガクッ」と崩れるようになったり、痛みが出たりするため、運動時のトラブルが多くなります。

前十字靭帯は内側半月板との一部結合があるため、ともに損傷していることが多くみられます。
炎症期から固定期間後、少しずつ膝関節の可動域を改善し、膝関節を安定させるためにトレーニングを行います。

内側側副靭帯損傷・外側側副靭帯損傷

大腿骨と脛骨の内側を繋ぐのが内側側副靭帯、大腿骨と腓骨の外側を繋ぐのが外側側副靭帯で、膝の外側からのストレス(外反ストレス)と内側からのストレス(内反ストレス)に抵抗することで関節面が内外側に開きすぎるのを防ぎます。そして、回旋動作時にも抵抗をかけることで膝関節の安定性を担っています。

十字靭帯同様で、安定性の失われた関節は、荷重時に動揺しやすく不安定になるため、回旋動作などで痛みと不安定感が強く出ます。
特に内側側副靭帯は、大腿内側にある筋肉とつながりがあるため、内側の筋肉にも影響を与えます。バランスの取れなくなった膝は、他の関節や筋肉で補助しようとするため、腰や反対の膝などの2次的なケガを引き起こしてしまう原因にもなります。

当院では、これらの靭帯損傷・半月板損傷に対し、炎症期から固定期間、リハビリテーションでの訓練やスポーツ復帰までのケアをしっかり行い、個人に合わせたストレッチ・エクササイズなどのホームケアの提案も行っています。

ジャンパー膝

膝蓋靭帯炎とも呼ばれ、ジャンプ着地時、ダッシュ&ストップなどの瞬発的な動作の繰り返しにより、膝蓋靭帯に炎症をきたす疾患です。

ジャンパー膝に似た症状で、オスグッド病という疾患があります。

オスグッド病

運動量の多い10~15歳の少年少女に多く、発生原因はジャンパー膝と似ていますが、損傷部位は膝蓋腱が付着する脛骨粗面という大腿骨になります。成長段階の骨は、大人の骨と比べ、軟骨部分が多く靭帯よりも軟骨が引っ張られて、損傷する疾患です。

ジャンパー膝もオスグッド病も似ていますが、損傷する部位が異なり、治療方法も変わってくるため、適切な判断が必要となります。
治療と予防のかなめとなってくるのが、大腿四頭筋とハムストリングスです。
大腿の前面と後面を覆う2つの筋肉のバランスが崩れることと、柔軟性の低下が要因となってくるためです。
リハビリテーションにて、筋肉の柔軟性向上・関節可動域の向上訓練を行い、膝蓋靭帯・膝蓋腱に負担がかからないよう予防していきます。

腰痛

バスケットボールの動きでは、オフェンス・ディフェンス時共に、前傾姿勢が多く、リバウンドやブロック時には、体が大きくのけぞるため、腰部への負担が大きいスポーツです。
また、お尻の筋肉や股関節・膝関節の柔軟性が低下しやすいのも腰痛疾患の原因となりやすいのです。

腰部の構造

人体の背骨の中で腰の骨は5つあり腰椎と呼ばれます。
腰椎の背側には、骨同士が関節を作っている椎間関節という場所があり、椎間関節部分や付着する靭帯などが損傷・炎症を起こすことを「腰椎椎間関節症」と言います。
腰椎の腹側には、骨同士の間に「椎間板」というやわらかいクッションの役割をする組織が存在し、椎間板やその周囲で損傷や炎症が起こることを「腰椎椎間板症」と言います。
腰椎の周囲には多くの筋肉が存在し、体の中心部分を支えています。
骨と筋肉がうまく働くことで、複雑な動き・大きな負荷に耐えられるようになっています。

筋・筋膜性腰痛

筋肉は、筋膜という薄い組織膜に包まれています。筋肉ひとつひとつに巻き付いているのではなく、筋肉の表層・深部・内臓・血管・神経など体全体を立体的にはりめぐらせているため、第二の骨格と言われています。
筋膜はやわらかく繊細な組織のため、萎縮や癒着を起こしやすい組織です。
筋膜に萎縮や癒着が起こることで、筋肉の動きがうまく出なくなり、痛みや柔軟性の低下を招きます。さらに、体の一部分が萎縮・癒着することで他の部位の筋膜に萎縮・癒着を招き痛みや柔軟性の低下を招くことがあります。

筋膜が萎縮・癒着を起こす原因は、
不良姿勢や体の柔軟性の低下、使い過ぎなどによる疲労の蓄積です。 前傾姿勢や回旋動作の多いバスケットボールは、本人の気づかない間に一部の筋膜へ過度の緊張をおこしている場合もあります。
痛みが出ている場所が原因の場合もあれば、他の部分の筋膜の萎縮・癒着による痛みの可能性もあるため、全身の動きや柔軟性をチェックする必要があります。

腰椎分離症・腰椎すべり症

主な原因は、背中を反らす動作や体を回旋させる動作を繰り返すことで、腰椎後方の椎弓と呼ばれる部分に亀裂が生じ、疲労骨折することで起こります。
骨の成長が未発達な小学生~高校生に発症するケースが多く、バスケットボール選手以外にも発症することの多い疾患です。
腰椎分離症患者の多くは、股関節の可動域が悪く、柔軟性が低下しており、練習量と体力の比率が合っていない場合が多いという特徴があります。

※あくまでも、このような症例数が多いというだけで、疾患を確実にするものではありません。

腰椎分離症は、進行すると腰椎すべり症へと移行していきます。
腰椎分離症の骨折部分が癒合せず不安定な関節は腹側にすべります。(腰椎分離すべり症)

当院での診察・処置

骨折がみられる場合は、レントゲン撮影で発見される場合も多く、骨折部が癒合する可能性がある場合は専用のコルセットなどで固定をおこなう場合があります。
初期の場合の骨癒合期間は約3ヶ月程度
中等度から重度の場合の骨癒合期間は6ヶ月から8ヶ月程度と言われています。
骨癒合がきちんとされていない状態で運動を行い、反り返る動作や、回旋動作を行うと激しい疼痛が生じます。

リハビリテーション

股関節や膝関節の柔軟性のチェック、上半身の筋力バランスの確認等を行い、腰部にストレスを与えないよう、各関節の可動域・柔軟性の向上を行います。
筋力訓練や柔軟エクササイズ、バランストレーニングを実施し、自宅で行えるエクササイズも積極的に指導します。

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