変形性膝関節症

変形性膝関節症

膝関節とは太ももにある大腿骨(だいたいこつ)と脛(すね)にある脛骨(けいこつ)の継ぎ目にある関節です。関節表面には軟骨がありクッションの役目をして摩擦を防ぎ、スムーズな関節の動きを行っています。関節は関節包に覆われて、靱帯(前十字靱帯・後十字靱帯・内側側副靱帯・外側側副靱帯)によって補強され、関節内にある半月板(内側半月板・外側半月板)より関節の円滑な動きを助けています。膝関節を動かす主な筋肉は伸ばす時に働く大腿四頭筋、曲げる時に働くハムストリングス(半腱様筋・半膜様筋・大腿二頭筋)・縫工筋、膝関節を通過して付いている筋肉は大腿筋膜張筋から移行する腸脛靭帯・大腿薄筋・腓腹筋があります。
変形性膝関節症は国内では約1000万人の患者がいると言われており、整形外科的疾患での有病率は腰痛についで第2位です。中高年の女性に多く、40歳以降に発症が多く見られます。

原因と病態

直接的な原因は膝関節表面の軟骨がすり減ることです。

一次性変形性膝関節症の危険因子

  • ①加齢:膝関節の軟骨は年齢とともに弾力を失います。
  • ②肥満:肥満は膝関節に負担がかかりやすく、軟骨がすり減りやすい状況にあるといえます。
  • ③女性:変形性膝関節症の患者数の男女比は男性1:女性4といわれています。
    • ・女性ホルモン:軟骨の形成には女性ホルモンのエストロゲンの働きが必要です。女性は閉経を迎えるとエストロゲンの分泌量が極端に減少します。
    • ・筋肉量:女性は男性に比べると膝の筋肉量が少ないため、関節に負担がかかりやすくなります。
  • ④遺伝:両親のいずれか、あるいは両方が変形性膝関節症であった場合には、影響を受けやすいようです。
  • ⑤膝の負担の大きいスポーツの習慣や仕事
  • ⑥O脚などの下肢の変形

二次性変形性膝関節症の危険因子

  • ①膝周辺の骨折、捻挫や関節軟骨の損傷
  • ②靭帯、半月板損傷
  • ③反復性膝蓋骨脱臼
  • ④大腿骨内顆骨壊死
肥満度(BMI)=体重(Kg)÷身長(m)2
BMI≦25を正常とする

症状と関節軟骨の状態

初期

初期の段階では軟骨がややすり減り、正常の方と比べると関節のすきまが狭くなっています。
症状としては起床後、動作の開始時に膝のこわばり(違和感)を感じるようになります。
具体的には起き上がったり、歩き出そうとしたりすると、なんとなく膝がこわばる、重くて動かしにくい、はっきりわからないような鈍い痛みを感じるなどの自覚症状が現れます。
ただし、しばらくからだを動かすと徐々に痛みはやわらぐので、あまり気にならない場合が多いようです。もう少し症状が進むと、正座や階段の上り下り、急に方向転換したときなどに痛みを生じるようになります。初期症状を放置しておくと、徐々に進行して症状が悪くなる場合があります。

中期

中期になるとさらに軟骨がすり減り関節に骨棘ができます。関節液に混じった軟骨の破片が骨膜を刺激して鋭い痛みが出やすくなります。しばらく休んでいたら治まっていた膝痛みが、なかなか消えなくなります。正座や深くしゃがみこむ動作、階段の上り下りなどが、膝の痛みがつらくて困難になります。膝の曲げ伸ばしもつらくなるなど膝関節の動きが制限されていきます(可動域制限)。
関節内部の炎症が進むため、膝が腫れて熱感も生じます。関節液の分泌量が増えるにしたがい、膝の変形が目立つようになるほか、関節がすり減って摩擦が大きくなるため、歩くときにきしむような(コツコツ、ゴリゴリ)音がします。

末期

末期になると軟骨がなくなり、大腿骨と脛骨が直接ぶつかるため激しい痛みが出ます。また関節をおおっている関節包の内側の滑膜に炎症が起こり肥厚します。そして黄色味がかった粘り気のある液体が分泌され、膝に水がたまった状態になります。
この段階になると、初期、中期段階でみられた症状がすべて悪化して、膝が完全に曲がりきらない、ピンと伸びない状態が進んで普通に歩いたり、座ったり、しゃがんだりするのも困難になります。安静にしていても痛みがみられます。日常生活にも支障をきたし、仕事、買い物、旅行などの行動範囲が狭まります。外見的にも膝関節の変形が目立ちO脚(ガニ股)となります。

治療法

一度すり減った関節軟骨は、もとに修復されることは難しいです。また、加齢とともに徐々に悪化していきます。そのため、変形性膝関節症の治療の目的は、痛みをとり、膝関節の動きを改善して膝関節の機能を高めていくことです。治療方法は、症状の進行や痛みの程度によって異なりますが、保存的治療では、薬物療法、リハビリテーション、装具療法が基本になります。これらの治療で痛みが緩和されずに生活に支障をきたす場合には手術治療という選択もあります。

保存療法

膝関節の痛みによって活動量が低下し運動不足になると、膝関節周囲を支える筋力が低下します。運動不足が続くと徐々に体重が増加してきます。その結果、膝関節への負担が増え、痛みの悪化という悪循環となります。

①薬物療法

  • ・内服薬:痛みや炎症をおえる非ステロイド性消炎鎮痛薬、解熱鎮痛剤、強力な鎮痛薬など
  • ・外用薬:皮膚から薬の成分が吸収されて患部に効果を発揮する塗り薬や貼り薬(湿布薬)や坐薬など
  • ・関節内注射:関節機能改善剤(ヒアルロン酸など)や、炎症を抑える作用が強いステロイドなど

②リハビリテーション

物理療法
物理的手段を用いて疼痛緩和、血流改善、関節の動きを改善させる効果があります。

  • ・温熱療法
    痛みをやわらげたり、炎症の改善には、患部を温めるのは大変効果的です。一般的に慢性の疾患の場合は、患部を温める温熱療法が行われます。ホットパックを使って管部を温める方法があります。家庭で行える温熱療法には、お風呂に入って患部を温める温浴があります。
  • ・電気刺激療法
    膝関節周囲の筋肉への通電により、筋収縮による血行改善で痛みを和らげます。低周波、干渉波などがあります。

運動療法
運動療法は血流改善による関節内の組織の新陳代謝改善(関節軟骨がすり減っていても、細胞が活性化して繊維軟骨が再生されやすくなります)や老廃物を排泄されます。また膝関節周囲の筋力強化で膝関節への負担を軽減させます。

等尺性運動
大腿四頭筋の筋力をつけて関節のぐらつき軽減して膝への負担を減らせます。

等張性運動
椅子に座って両膝の間にボールをはさんで膝をのばします(大腿四頭筋の中の内側広筋の収縮力が高まります)など

ストレッチやマッサージ
筋肉内の血行改善や、関節可動域改善のために短縮した筋肉に行います。

自転車や水泳(水中歩行)
膝関節の痛みがでない運動がベストです。

ウォーキングやスクワット
症状を悪化させることがあるのでで、担当医やリハビリテーション担当者と相談の上、痛みが落ち着いてから始めることが大事です。

③装具療法

膝にかかる負担を軽減し関節を安定化させる装具としては、サポーター(支柱付きサポーター)足底装具(O脚の改善)、機能的膝装具(プラスチックや金属の支柱でつくられた装具)、杖(松葉杖やさまざまな種類のものがありますが、日常生活ではT字杖がよく使用されます)など

手術療法

保存療法を行っても十分な効果が得られず、日常生活に支障をきたす場合には、手術療法も選択できます。手術をすれば膝関節の痛みが改善して動ける可能性が高まり、日常生活の活動範囲が広がり生活が明るくなります。
主な手術には関節鏡手術(関節鏡視下郭清術)、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術があります。手術にはメリットもあればデメリットもあるので担当医に相談ください。
手術後にも関節可動域訓練や筋力訓練などのリハビリテーションが必要です。

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