スポーツ外傷・障害

スポーツ外傷・障害

近年、スポーツは子供から高齢者まで幅広い年齢層で行われるようになってきています。特にウォーキング・ジョギング・ランニングに関しては年齢層の幅が広く、1番身近なスポーツと言えます。スポーツジムの増加や一般の方でも参加可能な大会の開催により競技人口は大幅に増えてきています。1日を通して道路や公園などを歩いている方や走っている方をよく見かけますよね。多くの方がスポーツを行うようになり、スポーツ外傷・スポーツ障害と言われる怪我が増えてきています。
みなさまはスポーツでの怪我といえば何を浮かべますか?
多くの方は足首の捻挫や打撲・骨折などを浮かべる方が多いのではないでしょうか。

スポーツ外傷

転倒や衝突など1度の大きな外力により組織が損傷し発症
例)打撲・骨折・肩の脱臼・足首の捻挫・靭帯損傷・肉離れ・脳震盪など

初期の治療とその後のリハビリテーションがとても大切で、適切な治療がなされるか否かにより、スポーツ復帰までに要する月日が大きく異なってきます。

外傷の緊急処置にはRICE

R(Rest)安静
I(Ice)冷却
C(Compression) 圧迫
E(Elevation) 挙上

安静だけでは、損傷した組織を保護できないことからRICEにProtection(保護)を加えたPRICEと呼ばれる処置に変わってきました。
さらに近年では急性損傷の早期管理として必要以上の固定、安静は悪影響を及ぼすことが分かってきており、Rest(安静)をOptimal Loading(最適な負荷)に置き換えたPOLICEという概念が広まりつつあります。

痛みの原因や症状にあわせ訓練を行い、固くなった筋肉を緩め血行を促進し、痛みを和らげ、障害部位の回復を促します。

POLICE

Protection(保護):装具やシーネなどで損傷組織を保護し、再受傷・悪化を防ぐことが目的
Optimal Loading(最適な負荷):最適な負荷をかけることで組織修復を促すことが目的
Ice(冷却):疼痛緩和や異常な筋収縮を改善させることが目的
Compression(圧迫):患部の内出血や腫脹を防ぐことが目的
Elevation(挙上):浮腫の軽減を図ることが目的

スポーツ障害

スポーツ活動の反復運動や過度の運動負荷が比較的長期間繰り返されることにより組織が損傷し発症(オーバーユース障害とも言われる)
例)疲労骨折・野球肘・ジャンパー膝・アキレス腱炎・シンスプリントなど

スポーツと疲労骨折部位について

尺骨・・・剣道
肘頭・・・野球
肋骨・・・ゴルフ
恥骨・・・長距離走選手
脛骨・・・ジャンプ競技、ランニングの多い競技
足舟状骨・・・陸上、ランニングの多い競技
中足骨・・・ランニングの多い競技
第5中足骨・・・サッカー

スポーツ障害の発症要因

①アライメント・形態異常
②コンディショニング不足
③運動フォーム
④デバイス・ツール
⑤練習内容・強度
⑥運動を行う地面(サーフェイス)

怪我を治すだけでなく、原因にアプローチする事が特に重要です。

①アライメント・形態異常

アライメントとは骨・関節の配列のことを言います。身近な例で言えば、O脚・X脚・扁平足などの形態上の特徴を表す言葉があります。人体の構造は真っすぐではなく、彎曲とねじれが存在します。この彎曲とねじれの度合いが強いと医学的に問題となり、特にスポーツ障害発生との関連が大きくなります。骨形態の歪みは運動効率を低下させ、筋腱や関節への負担を大きくします。ランニングのような単純で負荷的に軽い運動でもアライメント異常があると、同じ動作を繰り返し行うことによってストレスの積み重ねが生じ、障害を引き起こします。また骨格の彎曲やねじれがあると、急激なストップ・ターンや転倒・相手のタックルや接触の際に、不利な肢位で負荷がかかりやすく外傷も起こしやすいです。アライメント異常はスポーツ外傷・障害どちらにも不利益になるため早期把握・改善が重要です。

O脚

O脚が強いと膝の外側の張力が増すため、ランニング動作のような膝の屈伸運動を繰り返し行うと、腸脛靭帯と大腿骨外側上顆との過度な摩擦が生じ、腸脛靭帯炎を起こしやすくなります。

X脚

X脚では膝の外側に圧迫力がかかり、半月板損傷・膝蓋大腿関節症などが生じやすくなります。また膝の内側には伸長ストレスがかかりやすくなるため、内側に集まる筋の付着部に炎症が生じやすくなります。またコンタクトスポーツでは外側からの衝撃により内側側副靭帯損傷も発生しやすくなります。

扁平足・ハイアーチ(凹足)

扁平足は足の縦のアーチの低下が著しい形態であり、逆にハイアーチは同じ縦アーチが高すぎる形態をいいます。
足部のアーチの働きはランニングやジャンプにおける荷重時の衝撃の緩和や体重移動に重要である。 扁平足の場合は衝撃吸収が乏しいため、足部の疲労骨折・アキレス腱炎・脛骨過労性骨膜炎などのランニング障害が生じやすくなります。
ハイアーチの場合は足部の柔軟性に乏しく接地面積も小さいため、ショックアブソーバーとしては不適切であり、足底筋膜炎・足背部痛が生じやすくなります。

②コンディショニング不足

成長期では特に女子が11~13歳、男子が13~16歳の時期に骨が成長し身長が伸びるとされています。
骨の成長に対して筋の柔軟性が追い付かず、腱や付着部への過剰なストレスをきたします。
特に成長期の子供の診察を行う場合には1年間でどのくらい身長が伸びたかを聴取し、併せて下肢・体幹の硬さをチェックすることが重要です。

コンディショニング不足は筋力不足・筋肉の硬さ・関節の可動域制限に起因するもので、ストレッチ・ウォーミングアップ・クールダウン不足が原因として挙げられます。筋力の左右差や肩関節・肘関節・腰椎・下肢関節の柔軟性低下もスポーツ障害の原因となります。特に身長最終発育年齢の時期は骨・筋・腱の成長が不均等なため疲労骨折が発生しやすくなります。

③運動フォーム

運動部位のみを考えるのではなく、運動連鎖の観点から全身運動の流れを考えることが特に重要となります。

  • (A) 上肢の運動フォーム
    上肢では特に素振りや投げ込み動作などの反復によりスポーツ障害が発生しやすくなります。また従来の運動フォームを急に変更することでも発生しやすくなってしまいます。
  • 例)野球では投球フォームの変更や新しい球種を習得する際に、ボールの握り方や肩・肘の角度などが変わりストレスになることも要因の1つです。ボールの握り方が変わると前腕の回旋角度が変わり、それにより肘・肩関節周囲にストレスを及ぼす原因となります。またポジションによりフォームも異なります。内野手・外野手・投手・捕手により投球フォーム・投球距離・投球数が異なるためこれらの把握も必要です。
  • (B)下肢の運動フォーム
    下肢では特にランニング・ジャンプ・キック・カッティング(減速と方向転換を含む動作)などの反復によりスポーツ障害が発生しやすくなります。軸足・踏切足の相違や方向によっても生じる可能性があります。
  • 例)サッカーのキック動作にはインサイド・アウトサイド・インステップ・インフロント・アウトフロントキックなどがあります。キックの種類により足部や下腿の回旋方向や角度が変わり、それにより膝・股関節周囲にストレスを及ぼす原因となります。またポジションによりキックフォームやボールを蹴る方向が異なり、キックの種類にも偏りが生じるためこれらの把握も必要です。

④デバイス・ツール

ランニング・ジャンプ・キックなどを伴う競技では特にシューズ・スパイク・中敷の変更に注意が必要です。慣れないスポーツ用品を使用することでフォームが乱れて下肢・体幹部に疲れやストレスが生じることもあります。足の長さ・幅・形状に合ったシューズを選択することが重要です。
またゴルフクラブ・ラケット・バットなどのスポーツデバイスの種類・長さ・重さやグリップ・打ち方を変更した際にも生じる可能性があります。

⑤練習内容・強度

ハードなスケジュールでのトレーニングや過度の走行距離やスピードでのトレーニングはスポーツ障害の原因となります。体調やコンディショニングを考慮して個々の選手に見合った内容でトレーニングを行うことが重要です。
また日頃あまり運動していなかった選手が急に運動をし始める時も注意が必要です。例としては小学生が中学に入り部活動を始める際や中学生が高校に入って部活動を継続する際です。硬さや筋力を含めコンディションが不十分の状態なので急な練習等は過度なストレスとなります。

⑥運動を行う地面(サーフェイス)

運動を行う地面のことをいいます。土のグランド・芝のグランド・体育館のフロア・アスファルトなど様々なサーフェイスが存在します。普段の練習で使用していないサーフェイスで単調な反復練習をすることでスポーツ障害が生じることがあります。

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